2013年2月26日

春のセミナー祭り!翻訳学校のオープンスクール、まとめ

春、4月の開講に向けて、
たくさんの翻訳学校がオープンスクールや学校説明会を計画しています。

私も何年か前に翻訳学校選びに悩んでいたとき、
たくさんの翻訳学校のオープンスクールや説明会に参加し、
先生に直接質問したり、お話を伺ってたくさん情報を仕入れることができました。

日程的にはもう今週末!というところもあり、
受付終了されているものもありそうですが、
ご参考までに過去に参加したことのある学校を中心に
いくつかご紹介してみようかと思います。

そして、ごめんなさい、東京限定です。

日程の近い順に。

3月2日(土) 
10:00~12:00、13:00~15:00、15:30~17:30 の3コマ×6教室で単発のセミナーが予定されています。

医薬関係も以下の3つの講座があるようです。
「治験英語の和訳演習」、「専門性を高めよう!医薬分野の英語学習」、「医学・薬学英語学習の基礎」

こちらのオープンスクールは、
毎回レギュラーの講師陣の他に
ゲストとしてこのオープンスクールにだけ教壇に立つ講師の先生もいらっしゃいますので、
先生で講座を選ぶ、というのもオモシロイかもしれませんね。

3月2日(土)と 3月16日(土) 13:00~15:30
講義と演習の概要とモデル授業、提携会社による業界事情情報。
医薬翻訳、特に治験に特化した学校ですね。

翻訳技術だけでなく、治験知識を体系的に学べる講義について、
先生の教授法などの特徴を解説してくれます。(過去2回参加)

3月3日(日)
10:30~12:10、15:00~16:40の間に6講座。

ダイレクトに医薬翻訳をテーマにした講座はありませんが、
出版翻訳に関連する講座が多く、楽しそうという印象。(私も参加予定です)

3月10日、17日、30日の3日にわたって開催。

医薬翻訳としては、
10日13:30~15:00と30日 10:00~11:30 メディカル翻訳デモレッスン、
17日11:30~13:00 メディカル翻訳にチャレンジ ~炎症のメカニズムを知る!
がありますね。
デモレッスンでは、実際の講師の先生がデモをなさるそうなので、
受講検討中の方はのぞいてみるといいかもしれませんね~

2月28日~各セミナーにより日程さまざま。

医薬関連では、3月14日19:00-20:30「市場トレンドとプロデビューの傾向と対策を訊く」
というのがありますね。
ただ、現在はISSさん、医薬翻訳のコースがなくなってしまったのかもしれません。
HPに掲載がない・・・。私が学校を探していたころはコースがあったのですが・・・。

以上です。
こうやって並べると、3月は大忙しになりそうですね~。
他にも学校が見つかりましたら、追加していこうかなと思います。

2013年2月25日

「メディカルライティング入門」を受講しました

現在、英訳を受講中の学校に
特別講義として「メディカルライティング入門」という講座があったので、
受講してきました。

実はこの講座の受講という背景がありました。
無事に2回の講義が終わりましたので、その感想など。

講師は現役のシニアメディカル・ライター。

と書いてますが、受講前の私は、「メディカル・ライター」が何を対象に、
どういうものを書く人たちなのか、ということもよくわかっていない状態でした。

先生からは、授業の最初の頃に
「私達はライターと呼ばれていますが、実質的にはコミュニケーターの側面が強い。
欧米ではバイオメディカル・コミュニケータ(biomedical communicator)と言われるようになっています」という説明がありました。

先日のまとめ記事で調べた範囲だと、
書き手と読者をつなぐから「コミュニケータ」みたいなイメージだったのですが、
受講を終えてみると、実はもっと広い範囲の様々な立場の人を結ぶ、
重要な役割を担っていることがわかりました。

まず試験を行う研究者がいて、データを集める。
そのデータを解析する解析家がいて、
解析されたデータをライターが文字におこす。
実際には、もっと複雑な役割分担の中で多くの人をつなぎながら
一つの論文や報告書を完成させるのかと思うと、
お互いの意見を一定のお約束の中(論理的に)交換し、
効率よく共同作業を進める必要がありますね。
 
そのためにはただ「書く」能力だけでなく
どの立場の人も論理的に腑に落ちる形ですんなりと説得できるコミュニケーション能力が
やはり求められるのでしょうね。
ゆえにバイオメディカル・コミュニケーターという名称が定着しつつあるのだと思います。

世界の一流紙でアクセプトされる論文執筆やスムーズな新薬等の申請業務のためにも
日本でももっとこのバイオメディカル・コミュニケーターという仕事が認知されてもいいのになぁと思います。

ちなみに、この分野の先進国、アメリカではどのような状況なのか。
2月のMITAトークで行われたトム・ラング氏の講演を聴講した翻訳者さん(梅子さん@Kitashiraume、他みなさんありがとうございます)に聞いてみたところ、
ラング氏の見解では、
メディカルライティング/メディカルライターの地位は確立の途上にあり、
サービスや職業として知られていないことが多く、また、知っているとしても誤解されている場合が多い。
すなわち認知度が十分でないそうです。
専門的に勉強できるコースや教材が非常に少ないというお話もあったそうで、
アメリカでもまだまだ発展途上と言えそうですね。

話が少し脱線してしまいましたね。
受講した講座にもどります。

授業は翻訳者が普段目にする文書でも応用できる情報・テクニックをたくさんいただき、
課題図書も山ほど積み上がりました。
お写真をお見せできないのが残念ですが、分厚い本が多いのでリアルに山ですよ、山。

翻訳対象となっている原稿を論理的に読み解き、その論理が破綻しないように日本語(英語)にする。
解析結果を論理的に読み解き、そのメッセージが破綻しないように日本語(英語)にする。
いずれも想定される読者層はかぶりますし、読みやすく、頭に「?」が浮かばない文書を目指す点も共通ですね。

わずか2回の授業でしたが、
専門的な知識を効率よくインプットできただけでなく、
これからは翻訳もメディカル・ライティングもクロスオーバーさせながら
勉強を続けていくのが良さそうだという手応えも得ることができ、
とても有意義な講座だったと思います。

この講座は「入門」ということでしたので、
これからさらに実践的な講座の開講も期待しています。
(と、先生にラブコールを送ってみました笑)


2013年2月20日

マダニが媒介?重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

1)厚労省発表より

2月13日、厚労省が、
「新しいダニ媒介性疾患、重症熱性血小板減少症候群の症例が新たに2例確認された」ことを発表したと
メディア各社が報じました。


2012年秋、発熱や血小板減少等を呈したのちに死亡した患者が
新規ウイルスであるSFTSウイルスによる感染症であったと国内で初めて診断されたそう。
この患者は海外渡航歴のない成人だったとのこと。

これを機に、国内での情報提供と協力依頼を行ったところ、
先の報道にあるように新たに2例、ダニ媒介性疾患が確認された、
というのが発表の主旨です。

2)NEJMの記事より
この報道を目にして、「ネタみっけ!」と意気揚々とNEJMを検索したところ、
さっそく以下の論文がヒット。(不謹慎ですが、商売柄、ワクワクしちゃうんですよね~)

Fever with Thrombocytopenia Associated with a Novel Bunyavirus in China
Xue-Jie Yu, M.D., Ph.D., ら
N Engl J Med 2011; 364:1523-1532April 21, 2011DOI: 10.1056/NEJMoa1010095

このNEJMの記事は
厚労省が発表した
という資料にも参考文献に挙げられていました。

★中国における発症
2009年3月下旬及び7月中旬に、中国中東部 湖北省と江南省で
重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome SFTS)の出現が報告された。
原因は不明で、発熱、血小板減少、消化器症状、及び白血球数減少が主な症状。
致死率は30%。

患者の血液から(ヒト顆粒球アナプラズマ症の病原体)アナプラズマ・ファゴサイトフィルム
または他の病原体の検出を予想したが、細菌DNAやこの細菌に対する抗体も検出されず、
代わりに新しいウイルスが分離された。
これは、RNAシーケンス解析により
ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新規ウイルスでありることが明らかとなり、
SFTSウイルスと命名された。

★中国における調査
2009年より湖北省と江南省から地域を限定し、SFTSを有する患者を同定する調査を実施した。
発熱、血小板減少、白血球数減少及び多臓器機能障害を呈する患者からSFTSブニヤウイルスを分離。
2009年7月から2010年9月の間に、
SFTSの症例定義に合致した中央及び北東部の入院患者241名のうち、
171名にSFTSブニヤウイルスRNAまたはウイルス特異的抗体あるいはその両方を検出した。

検査による確定例154名のうち148名が2010年5月から7月の間に発症した。
また154名のうち150名(97%)が農家であり、森や丘陵地に居住し、発症前に畑で働いていた。
家庭では、蚊とマダニが広く生息しており、5900匹の蚊を検査したが、ウイルスRNAは検出されなかった。
一方、患者の居住エリアの動物から集めたフタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)186匹のうち
10匹(5.4%)に、SFTSV RNAを認めた。
Ver細胞培養やRNAシーケンス解析の結果、このマダニで認められたSFTSVは、
患者から得たサンプルで分離されたSFTSVと非常に近いが、同一ではないことが確認された。
このフタトゲチマダニはほとんどのほ乳類に寄生し、日本を含めた東アジアに広く生息している。

このNEJM掲載調査とは別の調査によると、
致死率は30%から10%代に下がっているようですが、
それにしても高い致死率。
そして身近なダニの介在が示唆されるだけに
ちょっと怖い気がします。
そして5900匹の蚊の検査って、すごい執念だなって思ったのですが
手分けしてやればこういうことってあるのかなぁ。。。 

(3)CDCの資料
厚労省の資料には、SFTSが疑われる患者を診た場合には、
国立感染症研究所へ連絡をと書いてありますが、
肝心の国立感染症研究所のHPには厚労省発表記事と同じ情報しか掲載がなかったので、
アメリカのCDCをチェックしてみました。

2012年6月発表の調査記事がありましたので、簡単にご紹介。

このCDC資料によると、
感染経路はマダニだけでなく、感染者の血液や粘液に接触することによるヒトとヒトの感染も考えられるとしています。

2011年6月、山東省(人口55万人うち85%は農業従事者)の淄博市の10の村で
237名の健康な有志から血清サンプルを採取し、血清有病率を調査を実施。
エライザ法を用いて、SFTSVに対する総 IgG 抗体価を測定。
2名がSFTSVに対しセロポジティブであった。
この2名とも女性で、SFTSVの症状はなく、類似症状で入院経験もなく、
発熱やSFTSの症状のある患者との接触もなかった。
また134匹のヤギからも血液サンプルを採取したところ、111匹に抗体を認めた。
不顕性または比較的軽症のSFTSがヒトに発症する可能性はあるが、さらなる調査が必要と結論した。

結局よくわからない・・・ということなんですね。
先のNEJMの調査とこのCDCの調査はエリアが違うこともあって
結果は異なっていますが、もっと広範囲でサンプル数も多い調査が必要なようです。

なんて悠長なことを言っていたら、
日本での死亡例が出てきてしまった、という流れ。

(4)実際に発症すると・・・
さて、ここ日本でもマダニは生息しているため、
気になるのは日本における現在の状況ですね。
厚労省の発表によると、
確定診断には、血液などからのSFTSVの分離、同定、
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によるSFTSV遺伝子検出、
急性期及び回復期におけるSFTSVに対する血清IgG抗体価、
中和抗体価の有意な上昇の確認が必要としています。

これらの試験は国立感染症研究所が実施できるので、
38度以上の発熱、消化器症状を停止、血液検査所見で血小板減少、
白血球減少及び血清酵素の上昇が見られ、集中治療を要する患者を見た場合は
保健所か感染症研究所に情報提供をと呼びかけています。

また有効なワクチンはなく、基本的に対症療法しかないとのこと。
感染経路としてダニに噛まれることが有力なため、
予防策として、草むらや藪など、ダニの生息する場所に入る場合は、
長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴の着用などがあるそうです。

そしてこのマダニは、屋内で普通に見られるダニ(コナダニやヒョウヒダニ)とは種類が異なるのですが、
森林や草地などの屋外だけでなく、市街地周辺でも見られるそうで、日本でも全国的に分布しているとか。

この疾患はまだまだわからないことがたくさんありますし、
日本でも今後患者数が増えてくるかもしれません。

また続報が出ましたら、ここでご紹介できればと思っています。

2013年2月17日

JATPHARMA ワークショップ 「読み手を意識したライティング」に参加してきました

2月16日(土)、渋谷で行われました

(宣伝ですよ~)
JATPHARMAは、日本翻訳者協会(JAT)の中の医薬翻訳者向けのグループで
今回のような勉強会/セミナー/ワークショップを実施したり、メーリングリストを運用しています。
JAT会員であればJATPHARMAグループメーリングリストは誰でも参加できますので
よろしければぜひ。
(宣伝ここまで)

さて本題です。
このワークショップは、読者を意識したライティング(Writing for the Reader)というテーマで行われ、
前半が先日ご紹介した書籍『トム・ラングの医学論文「執筆・出版・発表」実践ガイド』の著者である
トム・ラング氏と、
医薬翻訳・校閲に特化した会社を設立されているリー・シーマン氏のお二人の講演(各30分)、
後半が実際に問題を解くワークショップという構成でした。
講演も進行も全て英語で行われました。 

ご参考まで。書籍はこちら。

★トム・ラング氏
日本滞在中も精力的に活動されていたラング氏。
少しお疲れが見えましたが、お話はとても実践的で今からすぐ使えるノウハウでした。
メディカルライター、編集者として35年の実績があり、教育指導にも熱心に取り組まれています。

今回の講演は、ラング氏が「英語を教えるのはこの2点だけ」と
おっしゃる動詞の名詞化と受動態についてでした。

1)動詞の名詞化(Nominalizations)を避ける

詳細はぜひラング氏の著書をお読みいただきたいのですが、
動詞を名詞化してしまうと、他の動詞(make, use, performなど)を追加することになり、
この追加された動詞は多くの場合、元の動詞よりも弱く、文も長くなり、読みにくい文となる。

この名詞化された動詞を文の意味を変えずに、動詞に戻すという練習を後半のワークショップで行いました。

1例だけあげますと、
This author gives an analysis of the problem and offers a solution.
→名詞化を避けると・・・
The author analyzes the problem and solves it.

こういった感じの問題をたくさんやりました。

2)受動態を避ける
お話でへぇ~と思ったのが
データで受動態が能動態より意味の伝達力が低いと示されたことはないし、
何がなんでも受動態を使わないという意味ではない。
ただ、動詞の名詞化と受動態がセットになると、
理解が落ちることが問題であると指摘。

そして意味上の主語(subject of the thought)を踏まえて
受動態の方が適切な場合もあるとおっしゃっていました。

私も過去に「受動態は使わない」ということを
どこかの書籍で読んだ気がするのですが、
明確に使った方がいい場合(意味上の主語)を指摘してもらって
判断しやすくなるなと思いました。

★シーマン氏
同様のテーマでシーマン氏が続けて講演しました。
英語の書き方そのものについての話の前に、
その前提として、「読者像」についてお話がありました。

まず読者は、英語ネイティブより非ネイティブの方が多数であると。
これは英語を母国語として使う人よりも
仕事等ツールとして使う人の数が多いといため、ということでした。

そして実際に私達が訳した英語を読むのは英語の先生ではなく、
お医者さんや研究者、申請書や論文の審査者であって
とにかく明確で精度の高い情報を早く理解したいと思っていると。

そのために必要なのは、
1文を短くし、並列構造(Parallel structure)で書くこと。

並列構造とは、
一つの主語に対し、複数の動詞をandでつなぐような構造で、
箇条書きに展開できる場合も多い。

実際に日本語から訳された英語で、
並列構造ではない文と並列構造の文とを比べると、
確かに並列構造の方が読みやすいことがわかりました。

そして、たとえば、レジメンを示したような文書であれば、
書かれた通りに投与すれば間違い(投与ミス)が起こりづらいだろうと思える英文でした。

★ワークショップ
受付時に申し出をすれば、
「初心者グループ(トニーさんのサポート付)」に入れるハズだったのですが、
到着が遅くて入れず。

ランダムに3名1組でチームを組んで、課題に取り組みました。

私はネイティブの男性2名がチームメイト。
ちょっと誤解を生みそうなので、書き方が難しいのですが、
ネイティブの方と組んだのはよかったなと思いました。

だって、私と同じように「えっとこれは・・・」と考えないといけないんだもん!

てっきりネイティブの人は英文を見た瞬間に、
「この単語が名詞化されてるから、これを動詞に変えて。
意味上の主語はこれだから前にもってきて、ハイ、これでよし」っていう過程を
2秒ぐらいでやるもんだと思ったんですよ。

でも、ラング氏が「書き方」の本を書く必要があったように、
ネイティブの人も訓練しないといけない、という意味では
日本人と同じなんだなーって。

もちろん、コツを習得するのは私よりも断然早くて、
ワークショップの後半では、
「これ違うよ、ここが名詞化してるんだから・・・」と完全に教えてもらう立場でしたが(笑)。

ネイティブ二人がディスカッションして答えを出して先に進もうとしても、
私が「うぅ、わかんなくなった」って言うと、
「ここがさ、こうだから、、、」と説明してくれましたし、とても親切。

逆に私が異を唱えても、一緒に考える姿勢があって
「あーネイティブの人はこういう学習スタイルになれてるんだなー」って思いました。

日本人同士だと、誰かが違う意見を出すと、妙に遠慮してしまって、
「あ、そうですね、じゃそっちにしましょう」みたいな空気が生まれるんですが、
そういうことがないんだっていうのもひとつの勉強でした。

こういう機会に自分の意見の出し方や、相手の意見の受け入れ方、
議論の仕方みたいなのがちょっとですが練習できてよかったなと思いました。
(行ければ、ですけど)

大学で留学経験のある方なんかは、こういうの慣れてるんでしょうねー。
私も今さらながら追っかけますよ、JATのセミナーで(笑)

以上
内容にはあまり踏み込めませんでしたがセミナーレポートでした。
今月はあともう一つ勉強会セミナーに出席予定なので、
またそちらも報告できればと思います! 

2013年2月14日

映像翻訳セミナー「映像の向こう側とこちら側」に参加してきました

昨日、映像翻訳セミナー「映像の向こう側とこちら側」に参加してきました。

映像翻訳者未経験者を対象にしたセミナーで、
字幕体験ができる!と聞いて、随分前から楽しみにしていました。

最近でこそなかなか映画を見る時間がないのですが、
私は中学生時代からソロで映画館に通ったり、
レンタルビデオ屋さんに日参するような映画少女。
「映画の字幕付ける人とか、かっこいいなー♡」などとあこがれた少女時代でした。
(この後セミナーで、「映像翻訳者を目指さなくて正解!」ということに気づくのですが (^_^;)

今回のワークショップでは、字幕の対象となる映画を撮影された監督も同席してくださり、
映像を作る向こう側と字幕を作るこちら側がいっしょに時間を過ごす、
というユニークなスタイルでした。

監督はJohn Daschbach氏。ショートフィルムのコンペで受賞歴もある監督さんで、
今回は素材としてWaking DreamとBrief Reunionの2作品を提供。
日本に2年ぐらいお住まいだとかで、とても穏やかで笑顔の優しい方でした。

すでにWaking Dreamは日本語字幕付きでこちらにあがっています。
映像翻訳者ではない翻訳者が字幕をつけたそうで、
長いし、ちょっと読みにくい・・・。
じゃあこれを自分たちでつけてみましょう!ということになりました。

講師は映像翻訳者の仙野陽子さん。
(チョコさん@choco324というハンドルネームでSNS界で知らない方はいらっしゃらないですよね!)
代表作はCSI : ニューヨーク、Homelandなど。
CSI:NYは個人的に大好きで全シーズン見ているのですが、
あんな科学的にややこしー話を、字幕としてまとめているのが
こんな可憐でいいのか・・・と思ってしまう麗しの女性です。

仙野先生が、映像翻訳の基本的なルールを解説してくださったのですが、
やっぱり素人を苦しめるのは1秒3文字 4文字の制約。(※2/26修正しました)
みんなで映像を繰り返しみながら、
あーでもない、これだと字数オーバーだし、
と頭をひねりました。

そしてできた訳を先生がチェックしてくれるのですが、
もう私とか「才能ないなー 翻訳者としてもうだめなんじゃ・・・」と感じるに十分なほど
何もできとらん!状態で、非常に恥ずかしかったです。
先生が悪いんじゃない、生徒がアホなんや!
と立ち上がって他の受講生にお詫びしていぐらいの有様でしたよ・・・。
(この日は脳内が完全に大阪弁)

映像翻訳では、特にスクリプトの言葉(単語レベル)、会話主のキャラ設定、会話の状況、
文脈、そして言葉を発している時間の長さ、シーン全体に流れる時間、
こういった使えるモノは全部利用することが大事なんですね。
その中で必要な情報だけを選択し、
厳しい字数制限の中で適格な言葉に集約させる。

私は目の前のスクリプトの文字ばかり追ってシーン全体が読みきれずに、
キャラクターが言葉を発している長さとか、
カメラの動きとか全然見てないので、
言葉だけがぽっつり浮いてしまって、
会話として流れていかない。

この流れる、という感覚は非常に大事だそうで、
仙野先生は、「作品を見終わった後に、字幕があったことすら気づかないほど
さーっと流れていく字幕がいい翻訳」と定義されていて、
やってみてなるほどなーと思いました。

セミナーの最後にDaschbach監督が感想として
「今まではなんで全部のセリフを拾ってくれないんだって不満を感じることもあったけど、
今日の話で、セリフから捨てる情報と残す情報を決める過程がよくわかった。
そしてこれからは字幕屋さんに依頼するときは、
(情報を取捨選択しやすいように)文脈を説明するコメントをたくさん残そうと思う」
といった話をされていました。

それに対し、講師の仙野先生も
「私達は(全部セリフを拾うって)字幕を読んでもらいたいわけではなくて、
映像を、作品を見てもらいたい。
そのために様々な工夫をしてるんですよ」と監督に答えていらっしゃいました。

まさに向こう側とこちら側がよりよいものを作っていこうとするって
こういうことなのかなーとお二人のやりとりに感動してしまいました。

このセミナーに参加して、
字幕を通して制作に関われる楽しさも堪能し、
かつ「セリフの骨子を抽出して、字幕に置き換える」ということが
そのまま翻訳のキホンなわけで、すごく勉強になりました。
そしてそのキホンが全然できていないし、
全体を俯瞰する目も足りないんだなぁと自分の弱点を改めて確認することができました。

分野が違うからと敬遠せずに、
何事もやってみると楽しいし、勉強になるなーということを痛感した1日でしたー。

講師の仙野さん、監督さん、ありがとうございました!

2013年2月10日

13/30冊『対岸の彼女』角田光代著 読了

TwitterのTLで話題になっていたこちらを読みました。
 


Amazonから:いじめで群馬に転校してきた女子高生のアオちんは、ナナコと親友になった。専業主婦の小夜子はベンチャー企業の女社長・葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始める。立場が違ってもわかりあえる、どこかにいける、と思っていたのに……結婚する女、しない女、子供を持つ女、持たない女、たったそれだけのことで、なぜ女どうし、わかりあえなくなるんだろう。女性の友情と亀裂、そしてその先を、切なくリアルに描く傑作長編。第132回直木賞受賞作。

ずっとお仕事関連のものが続いていて、
翻訳モノでもなく、日本の小説を読むのは本当に久しぶり。

主人公は、子育から仕事を始めようとする小夜子と、小夜子が勤める会社の女社長、葵。
二人の過去と現在を行き来しながら物語は進みます。

二人は性格も生い立ちも、
現在置かれている状況もまるで違う。
全く違うのに、二人の心情や置かれた状況が
今の自分にはいずれもあてはまるような気がして
読みながらなかなかページがめくれないような気持ちになりました。

角田氏の筆が切り取る状況描写が、セリフが
いちいち突き刺さるようで、辛かったです。

ママ友のしがらみから公園ジプシーだった小夜子が、
また働き始めようと思い立つところから物語りが始まります。
何件も面接で落ち、ようやく採用されたのが葵の会社。

子どもの様子、保育園のこと、姑のこと、夫の悪意のない嫌み、労働の厳しさ。
働き出すと誰もが直面する様々な問題に小夜子も翻弄されながらも、
仕事をする自分を好きになり、
有り体な言い方をすれば、自分の居場所を仕事に見つけていきます。

一方、社長の葵は、陽気で、思いつきで楽しく社長業をこなす女性として社員の目には映っていますが、
中学時代にいじめを受けたことで
高校生活を細心の注意を払って過ごすようになる過去を持っています。
過去の姿を浮き出すことで、葵がどういう人物なのか、だんだんとわかってきます。

二人の物語を読み進めていき、気づけば、
人を信じること、喪失、再生について
自分の中を深く探るようになっていました。

高校時代の葵と親友の別離、
小夜子と葵の決別。

この2つのエピソードの中で、
人に近づけば必ず失う、でも人は必ずまた信じようとすることを
筆者は描きたいのでしょうか。

私には、どうして葵が親友との別離を受け入れられたのか、
物語を読んでもよくわかりませんでした。
でも、誰かをまた信じることができずにいたのではないかと思うのです。
だからこそ、小夜子と決別しても涙が出なかったのではないでしょうか。

ネタバレしちゃうので詳細は書きませんが、
角田氏は、年齢を重ねることはまた出会うためだと
きちんと明るい再生を記し、物語の幕がおります。

でも、と思うのです。
年齢を重ねることはまた出会うためだとか、
どうしてそんなに簡単に言えるのでしょうか。

誰かを信じたくて、信じるための言い訳を山ほどして誰かを信じる。
でも必ず人は離れていき、失ってからはその理由を、言い訳を幾万と考えて、喪失感を慰める。
そして過去の喪失なんて忘れてしまったように
また誰かを信じたくなっている・・・

人間としてあたりまえの営みなのかもしれないし、
今まで気づきもしないで繰り返していただけかもしれないのですが、
それを一旦小説を通して意識してしまうと、
自分の心の中に、どーんと重い石のようにのしかかってきました。
なんでまた信じることができるのだろうか、
私はまた誰かを信じるのだろうかと答えの出ない問を繰り返すばかり。
 
TLでも「続編期待」のことばがありましたが、
その後の主人公二人がどうなったのか、とても気になる1冊になりました。

ところで、冒頭にTLで話題になっていたので、と書きましたが、
この本を読んでいる途中に
「(辛すぎて)最後まで読めないかも」とつぶやいたら、
多くの方から「よい本だから最後までがんばれ」と応援をいただきました。

こうやって1冊の本をめぐって
短くても感想を言いあったり、応援したりできるのって
楽しいもんですね~。

今回は感想文というよりも
なんだかはっきりしない自分の心中をダラダラと書いてしまいましたが、
人の内面を深く描いた面白い小説だと思います。
未読の方は一度ぜひお手にとっていただき、どのように感じられるのか、
お聞きしてみたいなと思います。

2013年2月6日

12/30冊『トム・ラングの医学論文「執筆・出版・発表」実践ガイド』読了

既に満席で、現在キャンセル待ちが出ている状況ですが、
2月18日(土)に日本翻訳者協会(JAT)主催の医薬翻訳に関するワークショップ、
 「読み手を意識したライティング」が開催されます。

※実は先月から主催者であるJAT内の医薬翻訳を専門とする委員会(通称JATPHARMA)の末席におりまして、半分宣伝みたいな感じになってしまってすみません。

このワークショップでは、
講師にThomas A. Lang氏 をお迎えし、明確な医学論文の書き方を勉強するのですが、
事前課題としてこちらの本を読むことが必要になり、
今まで持ってなかったので、慌てて購入しました(笑)。



さっそく読んでみたので、以下にその感想をまとめたいと思います。

★実践的なリバイス例
私は現在英訳強化を掲げておりまして、
自分が書く英文だけでなく、
関連分野の英文を読む時(たとえば和訳のお仕事などで)にも、
「ほほー、こういう言い方するんだー」と
ちょっと意識的に英語を読むようにしています。

でも、どれがよいライティングで、
どれがイマイチなのか、という判断がつかなくて、
なんとなく全体で「読みやすいからいい英文?」とか
「理論がすっと頭に入るからいい文章?」とか、
常に「?」がついている状態でした。

本書では、
この点に注意して書きましょう、というガイドとともに、
ダメな英文のリバイス例が記載されているのがわかりやすいです。
中には今までけっこう目にしていた英文例が
ダメな方にあがっているものもあり、慣例として使われているんだろうけど、
美しくない英文なのか・・と気づくことも。

★表やグラフ
研究結果のデータをどうまとめるか、にまるっと1章を割いてあり、
データという値を、どうやって見せるか(図表の種類)、
またそれぞのれの目的(何をまとめたいのか)の解説が簡略かつ明確でした。

本書は本来、データから図表を作成するためのガイド本なのですが、
読み手にとっても、「そういう狙いでここにこの図があるのか」というのが
わかるのとわからないでは、全体の理解度に大きな差が出ると思うので、
とても勉強になりました。

非常にお恥ずかしいのですが、
試験結果を表1にまとめた、などと書いてあるけど
実際それがどういう意味を持つのか、
図表をみただけではなかなか分からず、結論の方まで読み進めて、
「あ、そういうこと?」みたいにわかることも多いのです・・・。

ちょっと話は脱線しますが、
論文全体の流れ(要約)が分かっていて全体を読むのと、
何の話が始まるのか、1パラグラフずつドキドキしながら読むのとでは、
やっぱり内容理解の深さが違うんじゃないかと最近になってようやく気づきました。

もちろん論文の背景知識や英語力などがあって
わかることもたくさんあると思うのですが、
全体をつかむために、図表を見て読み取れることも
短時間でおおざっぱに把握するにはいいんじゃないかなと思っていたので、
この本でざっくりわかるようになったのは収穫でした。

★つたない読み手の助けとなる抄録の書き方、原著論文の書き方
先の表やグラフと同様に、
本書では「書き方」を説いているのですが
実は「読み方」という視点でみても
すごく内容が整理されていると思います。

日本語でも英語でも、
長く医薬系、サイエンス系の論文を読んだり、
書いたりするご経験のある方はあてはまらないと思うのですが、
読み始めたばかりの人間にとって、
「どこに、何が、何の目的で」記載されているのか、
全体がなかなか見えないものなのです。

特に論文は自説の正しさを主張するために書かれているわけで、
なんか論理的なゆがみがあったりして「?」が生まれても、
なんだか強引に最後の結論まで持ってきていて、
結局「?」が大きくなって終わる・・・ってパターンもありますよね。

そんなときに、本書のように
どのセクションにはどんなことを書くべきなのか、
またその注意点は何か、を先に教えてくれると、
つたない読み手は内容の予測ができて読みやすくなると思うのです。

★その他
本書は、助成金申請方法やポスター発表、スライド発表についても多数のページが割かれているので、
これからもしスライドの翻訳やポスター発表の翻訳など案件が発生したら
まずこの本を一読してからとりかかると、
目的にあった内容を納めることができそうだなという印象を受けました。

以上
駆け足で一部のみをご紹介しましたが、
3800円の本書、紙が異常に立派(笑)なことも加味し、
お買い得なんじゃないかと思います。

タイトルにあるとおり、初めて論文を英語で書こうとしている人はもちろん、
医薬翻訳の初学者にもなかなかいい1冊かなと思いました。

2013年2月5日

メディカルライティング事情(団体編)

私は医薬系の翻訳を専門としてお仕事をいただいているのですが、
特に治験に関連する文書や、製品の販売を承認等してもらうための
申請書に添付する試験報告書などの翻訳を比較的多くいただいています。

翻訳だけに限らず、試験報告書や申請書、雑誌記事など広く医療に関連する文書を書くことを
「メディカル・ライティング」と呼び、ライターが所属できる団体がいろいろあるようです。

私が最近見聞きしたものを以下にざっくりまとめてみます。

Japan Medical and Scientific Communicators Associatio

日本における代表的なメディカルライティングに関する団体。
定期的な講座を行ったり、年次総会で勉強できたりと
活動が盛んな印象がありますね。
講座のレベルも初級から上級とレベルに分かれているので、
自分のレベルに合わせて受講できます。
会員外も参加できる講座もありますが、会員に座席の優先権があり、価格も安く設定されています。

会員になるためには、年会費8000円を納めると1年間有効。
ただし会計年度(4月1日から3月31日まで)のしばりがあります。

実はこの会計年度のしばりを知らなくて、
去年は入会をあきらめたので、
今年は4月から張り切って申し込みをし、
1年間フルに講座に出席しようと考えています。


近年では、専門情報を書くだけのライターというよりも、
読者をつなぎ、啓蒙する役割を踏まえて
「メディカルコミュニケーター」とか「バイオメディカルコミュニケーター」と呼ばれることが多くなっているそうです。

この分野の先進国、アメリカでは、
American Medical Writers Association(AMWA)が中心となっているようです。
入会は一般で165ドル、学生60ドル。
会員数5200、出版、教育プログラム、ネットワーキング、会員名簿の公開、求人情報があり、
中でも教育プログラムとして1979年からの歴史を持つ認証プログラムが特徴的です。

3日間ある年次集会で100以上のセッションが行われ、
認証プログラムに単位を認められるセッションもあります。

自習用プログラムも充実していて、教科書とCD-Romがセットになっており、
試験を受けて単位を認証プログラムに読み替えてもらうこともできるようです。


今年の年次集会は11月。オハイオ州コロンバスで開催されます。

毎年、日本からも参加する方が多いと聞いていますので、
日本人の参加レポートなどもご紹介できたらいいなと思います。


アメリカのAMWAの年次集会で、事前課題を提出し、
ワークショップを受けて単位を認定してもらう認定プログラムも魅力的ですが、
ヨーロッパも負けていません。

1989年に設立され、現在は39カ国から1000名以上の会員がいます。
入会費用は欧州から137ユーロ、欧州外だと158ユーロです。

教育プログラムとネットワーキングを主要な目的としており、
特にnon-native English speaker向けのプログラムがあることがAMWAと異なる点です。

毎年春と秋に2回の総会があり、規模の大きな春の総会では80のセッションが行われます。
こちらは英語学習をテーマにしたワークショップもレベル別にいろいろあるそうで
日本人の参加者はあまりいないようですが、AMWAよりも参加しやすいのかなと思ったり。

2013年の春はイギリスのマンチェスターが開催地。2014年はブタペスト。

2014年のブタペストは行ったことのない街だし、
来年、参加してみたいな~(稼がねば!)

The University of Chicago Graham Schoolのメディカルライティングプログラム

以前記事にしました内山雪枝先生の書籍に記載されていた
シカゴ大学の学習プログラムもおまけでご紹介。

今までは、自習プログラムと年に1回のシカゴ大学で行われる授業をセットで受講すると
単位を認定していたプログラムだったと思うのですが、
ちょうど今年の10月から開始される新しいオンラインプログラムは、
一度もスクーリングなく学習できる制度に変わったようです。

ちょうど2月19日(現地時間、日本時間だと20日のAM3:00)に
プログラムの説明がオンラインで行われるみたいなので、聞いてみようかしら。

1コースあたり$1,365。最低4コースの履修が単位認定に必要だそうです。
現地に行く交通費は抑えられますが、けっこうお高いもんですなー。
(大学の学費なので当たり前ってば当たり前ですが)

以上です。

メディカルライティングを学べる機関や方法など
今後もご紹介していこうと思います。