2013年1月21日

疾病根絶計画(メジナ虫症とポリオ)

日本にも「ツツガムシ」と呼ばれるダニの一種による感染症がありますが、
今回は世界の感染症根絶に関する記事をピックアップしました。

1) NEJMから
REVIEW ARTICLE
GLOBAL HEALTH
Disease Eradication

まず、言葉の定義を見てみましょう。
NEJMの記事に疾病撲滅国際特別委員会(International Task Force for Disease Eradication)による定義が紹介されていました。

Eradication : 根絶
根絶努力の結果として世界的に疾病がゼロになること。
コントロール手段を講じる必要がなくなった状態

Elimination:排除 
根絶努力の結果として特定の地域に限り疾病がゼロになること。
伝播の再興を防止するコントロール手段を講じる必要がある状態

日本では、根絶と排除が一緒になって語られることが多い様ですが、
この2つは明確に使い分ける必要があり、根絶はなかなかハードルが高いことがわかります。

たとえば、天然痘は、1977年を最後に自然発生は認められなくなりました。
これは根絶にあたります。

世界では疾病根絶に向けて、どのような動きがあるのでしょうか。
NEJMによると、世界保健総会は、 1986年にはメジナ虫症(糸状虫症)を、
また1988年にはポリオ根絶を世界目標とすることを採択し、宣言しました。
ところが、それから数十年経過していますが、未だに目標を達成できていません。

根絶キャンペーンの対象となっているメジナ虫症とポリオの他に、
フィラリア症(lymphatic filariasis)もWHOにより世界排除計画が立ち上がっています。
3つの疾病に対し、行われている国際的な取り組みはそれぞれレベルが異なりますが、
いずれにしても以下が鍵となるようです。

・疾病が発生したら、どんなに難所であっても介入する必要性
・対象疾病と介入の程度を監視する重要性
・進行中の監視とオペレーションズリサーチに柔軟かつ緊急に対応する必要性
・たとえ症例数が減少して1例あたりの費用が跳ね上がっても、対象疾病の伝播阻止という目標に集中する必要性

一番上の「難所」は、たとえば政治的に介入の厳しい地域であっても、
介入しなくてはなりませんし、監視するためには危険を伴うこともあるかもしれませんね。
後ほどご紹介するポリオ根絶への障壁もこのあたりにあるようです。

2)ワクチン以外の試み、メジナ虫症の例
感染症といえば、ワクチンが介入手段として有効ですが、
NEJMに、ワクチンだけでない根絶への試みとしてメジナ虫症の例が紹介されていていました。

メジナ虫症は1980年にCDCによる世界的な根絶キャンペーンを開始し、
1986年以来、WHO、CDCおよびUNICEFと密接な連携をとりながらカーターセンターによりキャンペーンが引き継がれています。

病態について見てみましょう。
(NEJMにはイラスト入りでメジナ虫の生態が紹介されています。)
寄生虫メジナ虫は、成虫(メスですね)が水に触れると、数千もの幼虫を放出します。
ケンミジンコがこの幼虫を摂取し、ヒトがケンミジンコ入りの水を池や開放井戸から飲みこむことで、メジナ虫の幼虫が体内に入ります。
そしてヒトが水を飲んでから約1年で、1m長(!)の成虫に育ち、
感染した患者の皮膚からゆっくりと出てくるのです・・・。

い、1mの虫が皮膚から出てくるって、考えただけですごい・・・。
他の資料も読んでみますと、相当痛みも伴うようです。当たり前ですよね。1mの・・・

感染による健康面、農作業、学業(学校に通う)への悪影響は容易に想像できますが、
痛みや皮膚から出てきた虫による二次感染を避けるために、
農作業期に数週間にわたって仕事ができないことなども考えられます。

介入方法としては、飲み水のろ過方法や汚染された水を飲まないといった指導が中心ですが、
弱い幼虫駆除剤を水源にまいたり、封じ込め策として自主的に患者を隔離したり、
可能であれば暫定的に安全な水源の用意なども行います。

これらが功を奏して、
1986年にはアフリカ、アジア20カ国で、推定350万例あったこのメジナ虫病は、
2011年ではたった1058例になりました。

日本に住んでいると、池の水は飲んではいけないとか、
井戸には蓋をするもんだとか、なんとなく常識だと思っていましたが、
そういった衛生面の指導が根絶へ大きく寄与しているようです。

3)ポリオの根絶
もう少し私たちの生活に身近な例も見てみましょう。
ポリオです。
日本でも生ワクチンだ、不活化ワクチンだという議論が活発に行われていることをご存じの方も多いと思います。

ポリオのワクチンは、いわゆる生ワクチンを経口投与するか、不活化ウイルスを注射するかですが、
このワクチンが導入される前の1950年代は、毎年世界で推定60万もの人が死亡または麻痺を起こしていたそうです。

WHO、ユニセフ、CDCや民間の財団の支持により、大規模な世界的予防接種を展開し、
ポリオウイルスの監視に努めたところ、
定期的な予防接種の強化につながり、また医療施設や研究室では精密な手法用いて、
汚物標本や感染を疑われる患者標本からのウイルス検出を判定し、ウイルスの監視を行うようになりました

1999年までに、2型野生株ウイルスは世界的に根絶し、
2006年までに常在野生株ウイルスの伝播は4カ国(インド、アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリア)を除き終焉したと考えられています。
インドは衛生状況がよくなく、人口密度が高いことから想定よりも頻回にワクチン接種を行う必要があることから根絶に至らず、
またアフガニスタン、パキスタンは2002年以降の政治的対立が原因となり介入できなくなりました。
ナイジェリアでは、ワクチン接種の副作用についての噂が原因となっています。

その他の問題として、ワクチンを投与された人間が長期にわたりウイルスを排出できること、
稀ではありますが、生ワクチンのウイルスが発病力を持ちはじめ、他者に感染する可能性があることがあります。

こういった状況を考えると、政治不安や定期的に予防接種を行うシステムがないといった問題が
根絶の大きな課題になっているのがわかりますね。
そして、ポリオについては、
弱毒化ウイルスの拡散が集団免疫の強化には有益ではありますが、
生ワクチンによる感染の問題も悩ましいところですね。

4)ワクチンについて
さて、感染症の根絶と切っても切れないワクチンについて、最後に少しだけ。
日本は世界の中でも予防接種に関しては、色々な面で遅れをとっていると言われています。
今回は日本医師会と予防接種推進専門協議会(日本感染症学会等が加盟)が呼びかけをしている
署名運動についてご紹介したいと思います。

日本医師会よりも日本感染症学会のリンクが内容がわかりやすかったので
こちらに貼り付けます。

予防接種法改正による7ワクチンの定期接種化を
実現するための署名活動の実施について
(提出期限 平成25年2月22日(金曜日)必着)

(概要)
医学的・科学的観点から、7ワクチン(子宮頸がん予防、ヒブ、小児用肺炎球菌、水痘、おたふくかぜ、成人用肺炎球菌、B型肝炎)すべての定期接種化に向け、速やかな予防接種法の改正の実現のための署名活動です。

詳細はどうぞ上記リンクをお読みください。
ワクチンで防ぐことができる病気(VPD)の根絶には
ひとりひとりが予防接種をきちんと受けることが大切ですね。

ちょっと視点がずれてしまいますが、
任意接種費用はけっこうバカにならないのです。
水痘は8000円、おたふくかぜは6000円、
上記7ワクチンからは外れますが、インフルエンザは1回3000円前後でしょうか(子どもは2回接種)。
(※任意接種の場合、医療機関や時期によって価格が変わります。
上記は我が子が過去3年ぐらいに接種した際の費用です。まだはっきり覚えてるほど痛かったですよ・・・)

以上です。
疾病の根絶はイタチごっこみたいに思っていましたが、
着実に成果を上げている計画もあり、
VPDの根絶に社会の一員として責任を持たないといけないなーと思いました。

2013年1月10日

大ベテランさんの翻訳勉強会に潜入してきました!

本日は大ベテランの先輩方に混じって、
少人数の勉強会に参加させていただきました。
もう私のような小童は、完全に場違い!という感じでしたが、
みなさん、本当に暖かく迎えていただき、ありがとうございました。

詳細を公開するのは控えさせていただきますが、
すごく勉強になりましたので、そのエッセンスを少しだけ書かせていただきたいと思います。

★言葉をただ訳すだけでなく、文化的な側面も常に配慮すること
ただ英語の字面を日本語にするだけでなく、
その英語の書かれた背景をきちんと理解しなくては誤訳に繋がるよ、
という例をご紹介いただきました。

特に、日本ではこういう習慣だからと、
英語圏の文化を知らずに読んで理解した気になって訳すと危ないなと。

勉強会では、聖書の有名なエピソードを踏襲して書かれた文書を訳す際、
そのエピソードについて深く調べず、
「こういう話だったよね」と日本人に伝わっている内容理解だけで訳してしまい、
結果誤訳してしまう、といった例をご紹介いただきました。

この「文化的背景」というか、
原文を書いた方の頭の中にある当たり前の常識、習慣、文化を意識することが大切なんだと思いました。

おそらく海外滞在の長い方などは、
生活をして肌を通じてわかる自然な習慣とか文化の素養があると思うのですが、
私は海外生活の経験がほとんどないので、
意識的にやらないとダメだなーと思いました。

でも、そんなことを考えたり、調べたりするのも、
翻訳の醍醐味ですよね。

★日本語力をあげる
てにをは、句読点、修飾語の位置、などなど
ちょっと意識するだけで、日本語の読みやすさや伝わりやすさが
すごく変わるという事例をたくさん勉強しました。

また余計な一言を付けて誤訳してしまう恐ろしさもご紹介があり、
翻訳はやっぱり何も足さない、何も引かないが大原則だなと改めて感じました。

訳文を仕上げてからチェックする時、
つい近視的になってしまって、
客観的にチェックするのが苦手なので、
チェックすべき項目をリスト化してやってみようと思いました。

もちろん正規表現などで機械がカバーできる部分もたくさんあると思うのですが、
まず、自分の日本語を客観的に読んで「おや?」と思えないと
品質は上がらないなと。


★マクロのカスタマイズで作業環境の最適化
訳抜けを防止し、スピードを上げるために
独自でマクロを書いて、作業環境を最適化している事例をお聞きしました。

機械にできることは徹底的に機械化し、
翻訳作業に集中できるようなカスタマイズがすごいです。

同じ方法でやれば万人がスピードUPする!といったことではなく、
翻訳する工程を細分化し、
ひとつひとつの作業を「人」、「機械」に振り分け、
「機械」ができるように自分でカスタマイズする、
というその姿勢が勉強になりました。

今、自分の作業工程を振り返ってみても、
毎日なんとなく作業していているだけで、
先輩のように全てを把握し、コントロールしているか、と問うてみると、
全然できてない・・・のです。

もう少しマクロや正規表現を勉強することと同時に
自分の作業工程を整備し、最適化を目指したいなと思いました。

★翻訳者の価値は、原文よりもよい文書を出すことにある。
いただいた原稿の意味がわからん・・・と嘆く前に
文脈や製品そのものの構造をよく考えて
内容を理解し、原文よりもよい内容の文書を出す・・・。
それが翻訳者の価値なんじゃないかと教えていただきました。

たとえ英語や日本語が間違っていたとしても、
内容をくみ取ってあげるという姿勢で臨み、
内容を完全に理解し、理解できたらその理解を元に訳出する、というワークショップでした。

内容理解については、学校でも習ったし、頭ではわかっているつもりだったのですが、
実際に先輩の訳例を見ると、その理解の深さが違うというか、
完全に自分のものになってから、訳が出ているので迷いがない。
結果、読み手にも一切の疑問を想起させないという完成度の高さが衝撃でした。

ひどい原文がこんな美しい形になるのであれば、
それはまさに「お金を払ってもやってもらいたい」と思うよねー、と
「稼ぐ人には理由がある」とはこういうことかと思いました。

・・・・・
勉強会終了後、
近くの銭湯により、電気風呂に入ったりしたのも楽しかったです。
その後のビールもおいしくて、たくさん飲んで、いっぱいおしゃべりもして
充実した1日でした。

お留守番してくれていた子どもたちとおばあちゃんにも感謝!

2013年1月7日

猛威をふるうノロウイルス、その構造とCDCの衛生プログラム

(※1/7に一部加筆修正し、再掲いたしました)
毎年冬になると流行するノロウイルスによる胃腸炎。
今季は大流行が懸念されており、
実際、日本でも海外でも多く発症が報告されています。

1)NEJMから 
少し古いですが、11月29日発行のNew England Journal of Medicine (NEJM)にも
病態解説の記事として、免疫低下患者におけるノロウイルス胃腸炎について記載がありました。
Karin Bok, Ph.D., and Kim Y. Green, Ph.D.
N Engl J Med 2012; 367:2126-2132November 29, 2012

この記事の中で、ウイルスの構造について、以下のように書かれていました。
ノロウイルスは小さく、エンベロープ※を持たない単一鎖RNAゲノムのウイルスである。
カリチウイルス科ノロウイルス属。
(注:※エンベロープとは、ウイルスにみられる膜状組織のことで、
脂質からできているため、エンベロープ持つウイルスは、
アルコール殺菌等しやすいらしい。(Wikiより))
ノロウイルス属は、6つの遺伝子グループ(GI~GVI)に分類されるが、
このうち人間の疾患に関与するノロウイルス株の多くはGIとGIIで、
さらに約30の遺伝子型に分かれている。
またGIIは、世界的なアウトブレイクに関与している株であることが分かっている。

ノロウイルスのゲノムは、7つの非構造タンパク質と2つの構造タンパク質をコードする。
RT-PCR法による診断解析では、高い配列保存性ゆえにRNAポリミラーゼ領域を標的にしている。
構造蛋白質1(VP1)は主要な構造タンパク質であり、
ウイルス様粒子(VLP)を形成するが(このVLPはワクチンとなる可能性があると目されている)、
ノロウイルスは、VP1の突出2(P2)領域内の組織血液型抗原(HBGAs)の糖類に結合し、
胃腸管の上皮細胞にウイルス侵入しやすくなる構造と考えられる。
(注:これは、糖類(糖鎖)は一般的にウイルスレセプターとして働く分子であるため、結合しやすくなるためと思う)

ヒトにおけるノロウイルスの感受性は、HBGAの対立遺伝子変異によって決まり、
ノロウイルス株には、それぞれに特徴的なHBGA結合プロファイルが認められる。
例えば、特定の遺伝的背景が感染に抵抗性を付与することがあるが、
これは対象(ヒト)が非分泌型として分類された場合で(=糖質が腸管上皮細胞の表面に発現していない対象である場合)、GI株つまりノーウォークウイルスに感染抵抗があるということになる。
※一部引用しながら、適宜追補しています。

非常に上手い構造を持つウイルスですね。
アルコールに強いから除去も難しい上に、胃腸管の上皮細胞に入り込みやすい形。
お腹が痛くなってきました。。。

2)感染したら・・・
では実際に私たちが感染した場合、
どのようにして診断が下るのでしょうか。

多く実施されているのは、RT-PCR法とよばれる診断方法です。
厚労省からも細かい指示書が発出されていますが、
糞便中のウイルスに対し、リアルタイムでポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) による増幅を測定し、
その増幅率を調べて、ノロウイルス遺伝子の定量を行ないます。
なぜこんなめんどくさいことをやるのかといえば、
ノロウイルスは細胞培養ができないんですね。
シャーレ等で培養して、それで試薬による判定みたいなことができない。
でも、ウイルスの塩基配列が分かっているため、遺伝子の型を見極める上記の方法で
ノロウイルスの型が出てくれば、ノロウイルスに感染していると確定診断が下ることになります。

その他に、ちょっと面白いところではCTを利用した診断方法もNEJMで紹介されています。
免疫低下患者(特に移植を受けた患者)を対象にした場合として、
移植片対宿主病(GVHD)なのか、ノロウイルスに感染しているのかを判別するために、
CTによる検査を実施するそうです。
判定のメカニズムは、割と単純で、
ノロウイルスに感染すると、 小腸に限定的な腸壁浮腫を生じますが、
これは小腸のサイトメガロウイルス(注:免疫低下した人が感染すると肺炎を引き起こす恐れがある)
感染やGVHDを有する患者にはほとんど認めないため、
浮腫の有無をCTで確認し、浮腫があればノロウイルスと診断できる、としています。

免疫低下患者には色々な病気に感染しやすい状態ですが、
もしGVHDを発症した場合は、早急な処置が必要になるので、
ノロかGVHDかの判定を速やかに行えることはとても有用だと思います。

3)CDCのクルーズ船衛生プログラム
この記事を用意している間に、
カリブ海のクルーザーで集団感染か?のニュースが入ってきました。
CDC(米国疾病予防管理センター)発表によると、これから本格的な調査が入るとか。

さすがは、感染症といえばCDC。
様々な取り組みをしているのは知っていたのですが、
クルーズ船を対象にした衛生プログラムがありました。

このCDCの取り組みにも少し注目してみましょう。

CDCによると、
このVSPでは、クルーズ産業において、
クルーズ船上の胃腸管疾患の発生、伝播、および蔓延の予防とコントロールを行うため、
公衆衛生法のもとで運営されているそうです。
運用マニュアルも準備されていますが、全部ご紹介はできないボリュームなので、
エッセンスのみを簡単に箇条書きします。

★具体的な手法
乗客への情報開示:
船上のノロウイルスについて(日本語もあり)リーフレット、
アウトブレイク情報、アウトブレイクに関する調査結果、
定期的な衛生査察についてなど、
広く啓蒙的な情報を開示しています。

クルージング産業への働きかけ:
パブリックミーティングの開催、
アウトブレイク予防および対応手順書の策定、
情報開示;査察(実施、結果発表)、
ガイドライン等出版物の公表、アウトブレイク情報など

トレーニング:
ビデオトレーニングとセミナートレーニングの2種類。

査察
13名以上が乗船し、海外に出航する船を対象に定期的に実施(プログラウ対象船は年2回、抜き打ち)し、スコア化の上公表される。
逸脱部分は修正義務があり、もし査察基準を落第してしまうと、
修正期間を与えられるが、航海を推奨しないと勧告される場合も。

査察内容を見ると、水(飲み水、プール等)、食事(食品、食堂等)だけでなく
施設(個室や共同エリアの衛生等)にも言及した内容になっていました。
このようにしっかりとした査察をしても、
カリブ海クルーズのような惨事はおこるもの。
船では衛生管理を怠るとパンデミックがあっという間に起こるという教訓を
乗客としても忘れてはいけないですね。

私も乗船時には除菌アルコールなどを持ち込もうかな。
まぁ豪華客船に乗る機会は当面ないと思いますが・・・。
4)日本では・・・
一方、日本ではどのようなノロウイルスの予防、コントロールがとられているのでしょうか。

厚労省では、注意喚起を促すページが用意されていますが、
ノロウイルスを食中毒の範囲で考えているのがわかります。

感染症情報センターでは、
ノロウイルス感染症ページが用意されており、
検出情報から遺伝子型についての詳細ページ、
一般および医療従事者向けの予防と対応に関するページもありました。
内容的には、厚労省よりも専門性が高いという印象です。

いずれも、船舶など大勢の人が集まり、かつ孤立するような場所での
予防策はとられていないようでした。

以上です。
次回の更新もどうぞお楽しみに!
(※1/7に一部加筆修正し、再掲いたしました)

2013年1月6日

11/30冊『Media Makers-社会が動く「影響力」の正体』田端信太郎著 読了

当ブログ、すでにご案内しました通り、
プチリニューアルして方向転換を図っていますが、
本書を読んでから取りかかればよかったかなーなどと思ったりしてます。
読みやすくて、全体をつかむのにとてもよい1冊だと思います。

 

Amazonより:メディアの知識は、現代ビジネスパーソンの一般教養です。
メディアが毎日の隅々までを浸す「メディア爆発時代」。ビジネスの成否や、人生の質をも左右する「メディア・リテラシー」の身に付け方とは…?
8000万ユーザーの「LI NE」、5億PVの「livedoorニュース」、60万部の「R25」など数々のメディアビジネスを経験した著者が、メディアの成り立ちから影響力の正体を解き明かします。
本書籍は、宣伝会議運営の広告界のニュースサイト「アドタイ」の人気コラム「メディア野郎へのブートキャンプ」をベースに大幅に加筆・修正を加えて書籍化されたものです。

デジタルと紙媒体とを自由に行き来する
田端信太郎氏による著作です。
内容とは直接関係ないですが、kindleで読んだ本の初めての感想文になります。

読了後、まずタイトル「Media Makers」はよくできてるなーと思ってしまいました。
メディアを創ることについて様々な角度で書かれている1冊で、
メディアの概念を整理し、その影響力を分析し、
コンテンツの傾向からメディアビジネスのあり方を提示し、
最後は個人型メディア戦略まで一気に読ませる構成です。

本書の内容は、この1,2年のメディアの動きだけを分析したものではなく、
もっと普遍性があると感じましたので、少し細かくご紹介します。 

★メディアとは
まず、メディアとは、「送り手」と「受け手」のコミュニケーションを
成立させることを目的とするもの、と定義。
そしてこの「送り手」と「受け手」の立場でメディア論が展開されます。

1)「業界」の創出
メディアの誕生が業界を創った例として
ヨガとヨガ雑誌の創刊を挙げています。
新興宗教の影響もあり、「怪しげ」と思われていたヨガ。
これをアメリカ経由で「おしゃれでヘルシー」なイメージに一新したのは、
雑誌「Yogini」の創刊が大きかったとしています。
結果として、女性向けの健康法、美容法としての「ヨガ業界」が
立ち上がり、確立したと言えるでしょう。

つまり、受け手がメディアを見て、
それまで意識していなかった潜在的な欲望(この場合はエアロビじゃないジムスポーツがやりたい、エコな感じが好き等)が、
製品・サービスへの需要(ヨガを習いたい、ウエアが必要等)として顕在化された例だと考えています。

2)予言を自己実現する力
新聞の飛ばし記事があれよあれよという間に世の中を動かし、実現してしまうように、
メディアには公に向かって発した瞬間からその内容を自己実現させる方向に向かう力が
生来のものとして備わっていると田端氏は「ライブドア事件による上場廃止」までの
流れを実際に目にして実感したそうです。

この実現する能力に対する信頼性がメディアブランドとしての信頼感につながり、
それに対して広告主は広告費を出している一面があると。
田端氏はこの実現する能力を「マジック」と呼び、
「無から商品の需要それ自体を生み出す」ようなブランディング広告に対し、
期待されているのは、このマジックであると結んでいます。

つまり、1クリックいくらで支払われるようなチマチマした広告ではなく、
メディア全体を覆う信頼感のようなものに対し金銭を払い、
そのマジック力によって、潜在的な顧客の需要を引き出すことを期待されているということですね。

★コンテンツ
次に、メディア特性の一つとして、現在のコンテンツ事情を解説しています。
1)ストックとフロー
時間に着目した概念。

ストック型は、貯蔵して後からでも読み返すようなコンテンツ(Wikipedia等)
 SEOを意識した編集で、あとから検索されるようなものを目指す

フロー型は、そのときに読むべきコンテンツ(Twitterのタイムライン的)
 「今ココ」で読まねば、という強い意味づけに価値がある。

2)参加性と権威性
内容の責任を誰がコントロールするのか、が二つの性質の違いになります。
編集責任のあり方ですね。

参加型(たとえば食べログ)のコンテンツでは
受け手が単なる読者を超えた存在となり、双方向で好循環のループを生み出す。
いい情報が集まり、情報の信頼度も上がる。
しかし、メディア運営者側から完全な内容のコントロールはできない。

権威型(たとえばクラシカルな雑誌)のコンテンツでは、
編集長が絶対的な権利と影響力を持ち、全てをコントロールできる。
読者にその内容の是非を考えさせたりせず、鵜呑みにさせるような力を持っている。
ただし権威には腐敗リスクあり。

3)リニアとノンリニア
リニア(たとえば映画)
時間軸を頭から最後まで完全に支配するコンテンツ。
長編映画のように、連続した時間消費を受け手に促す

ノンリニア(ほとんどのデジタルコンテンツ)
ソーシャルメディアや検索結果から直接流入し短時間閲覧するコンテンツ。

このように3つの軸でコンテンツの特性を分けましたが、
全体の流れは、 フロー型、ストック型、ノンリニアに傾いていると考えられます。

★ブランド化の必要性
田端氏は、このようなメディアとコンテンツの特性を踏まえ、
かつ携帯やスマホの登場などで
既存の権威的な送り手が受け手に情報を発信するという構図が崩れており、
万人が情報を発信し、それを受け手が自由に選択する時代において、
送り手に必要なのは、その他大勢に埋もれないようにブランド化することではないかと主張します。

確かに星の数ほどあるブログの中でも
本当に読まれているのはごく少数ですね。
もしかしたらいいブログが埋もれているかもしれないですが、
読まれなければ意味がないですし。

このブランド化について必要なことをとてもシンプルにまとめていきます。
権威主義に陥らないまでも、多少の上から目線が受け手には求められていること。
送り手が「社会に貢献できる価値は何か?」を自問し、
その答えを踏まえた上で書いた記事に「私」の個人としての想いが乗らなければならない。
全ては受け手(読者)のためと考え、情報を取りに来た受け手の本来的な(潜在的な)意味は何かを考えること。
また現代においては、受け手がどのテクノロジー(スマホかPCかなど)を使い、
メディアを利用するのかについても配慮して、全体構造を作る(アーキテクトする)必要があるとしています。

★個人型コンテンツ
最後の章では短いながらも個人型コンテンツについての言及もありました。
個人メルマガを例にあげ、
コミュニケーションの手段として課金をとらえ、
送り手に対する受け手の「愛」を表現する方法となっていると指摘します。 

今まででしたら、雑誌にインタビューが掲載されていれば、その雑誌を買っていた、
それと同様に個人メルマガに対してお金を払うようになってきたと。
しかも雑誌は他の情報も抱き合わせで買わねばならないけれど、
個人メルマガは本当に一個人だけのアンバンドリングな状態での情報発信なので、
愛の純度が高いというか、その人だけのためにお金を出しているという気持ちになれます。

そしてこの個人メルマガは、個人完結型ゆえ、
一人でリスクも信頼も影響力も手に入れることになるわけです。
高いリスクを払う分、リターンも大きいのは当たり前ですね(影響力も金銭面でも) 

★感想
毎日PCの前に座り、たくさんの記事を読むわけですが、
コンテンツがどのように作られ、配信されているのかについては
あまり考えたことがありませんでした。

しかし本書を読んで、改めてインターネットを見ると、
メディアを生き抜くためには、
良質のコンテンツを置くだけではダメで、
コンテンツをどう見せて、
どういうタイミングでリリースし、
どういう配置(立ち位置)で見せていくのかを考える
編集者という視点が不可欠だろうという思いを強くしました。

翻訳者ブロガーも簡単に情報発信できる時代ですが、
メディア・メーカーとして生き抜くためにも
メディアについて賢くなり、
コンテンツの特性を見極め、最適化できる編集者の役割も
担わねばならないのだなと思いました。