2013年2月10日

13/30冊『対岸の彼女』角田光代著 読了

TwitterのTLで話題になっていたこちらを読みました。
 


Amazonから:いじめで群馬に転校してきた女子高生のアオちんは、ナナコと親友になった。専業主婦の小夜子はベンチャー企業の女社長・葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始める。立場が違ってもわかりあえる、どこかにいける、と思っていたのに……結婚する女、しない女、子供を持つ女、持たない女、たったそれだけのことで、なぜ女どうし、わかりあえなくなるんだろう。女性の友情と亀裂、そしてその先を、切なくリアルに描く傑作長編。第132回直木賞受賞作。

ずっとお仕事関連のものが続いていて、
翻訳モノでもなく、日本の小説を読むのは本当に久しぶり。

主人公は、子育から仕事を始めようとする小夜子と、小夜子が勤める会社の女社長、葵。
二人の過去と現在を行き来しながら物語は進みます。

二人は性格も生い立ちも、
現在置かれている状況もまるで違う。
全く違うのに、二人の心情や置かれた状況が
今の自分にはいずれもあてはまるような気がして
読みながらなかなかページがめくれないような気持ちになりました。

角田氏の筆が切り取る状況描写が、セリフが
いちいち突き刺さるようで、辛かったです。

ママ友のしがらみから公園ジプシーだった小夜子が、
また働き始めようと思い立つところから物語りが始まります。
何件も面接で落ち、ようやく採用されたのが葵の会社。

子どもの様子、保育園のこと、姑のこと、夫の悪意のない嫌み、労働の厳しさ。
働き出すと誰もが直面する様々な問題に小夜子も翻弄されながらも、
仕事をする自分を好きになり、
有り体な言い方をすれば、自分の居場所を仕事に見つけていきます。

一方、社長の葵は、陽気で、思いつきで楽しく社長業をこなす女性として社員の目には映っていますが、
中学時代にいじめを受けたことで
高校生活を細心の注意を払って過ごすようになる過去を持っています。
過去の姿を浮き出すことで、葵がどういう人物なのか、だんだんとわかってきます。

二人の物語を読み進めていき、気づけば、
人を信じること、喪失、再生について
自分の中を深く探るようになっていました。

高校時代の葵と親友の別離、
小夜子と葵の決別。

この2つのエピソードの中で、
人に近づけば必ず失う、でも人は必ずまた信じようとすることを
筆者は描きたいのでしょうか。

私には、どうして葵が親友との別離を受け入れられたのか、
物語を読んでもよくわかりませんでした。
でも、誰かをまた信じることができずにいたのではないかと思うのです。
だからこそ、小夜子と決別しても涙が出なかったのではないでしょうか。

ネタバレしちゃうので詳細は書きませんが、
角田氏は、年齢を重ねることはまた出会うためだと
きちんと明るい再生を記し、物語の幕がおります。

でも、と思うのです。
年齢を重ねることはまた出会うためだとか、
どうしてそんなに簡単に言えるのでしょうか。

誰かを信じたくて、信じるための言い訳を山ほどして誰かを信じる。
でも必ず人は離れていき、失ってからはその理由を、言い訳を幾万と考えて、喪失感を慰める。
そして過去の喪失なんて忘れてしまったように
また誰かを信じたくなっている・・・

人間としてあたりまえの営みなのかもしれないし、
今まで気づきもしないで繰り返していただけかもしれないのですが、
それを一旦小説を通して意識してしまうと、
自分の心の中に、どーんと重い石のようにのしかかってきました。
なんでまた信じることができるのだろうか、
私はまた誰かを信じるのだろうかと答えの出ない問を繰り返すばかり。
 
TLでも「続編期待」のことばがありましたが、
その後の主人公二人がどうなったのか、とても気になる1冊になりました。

ところで、冒頭にTLで話題になっていたので、と書きましたが、
この本を読んでいる途中に
「(辛すぎて)最後まで読めないかも」とつぶやいたら、
多くの方から「よい本だから最後までがんばれ」と応援をいただきました。

こうやって1冊の本をめぐって
短くても感想を言いあったり、応援したりできるのって
楽しいもんですね~。

今回は感想文というよりも
なんだかはっきりしない自分の心中をダラダラと書いてしまいましたが、
人の内面を深く描いた面白い小説だと思います。
未読の方は一度ぜひお手にとっていただき、どのように感じられるのか、
お聞きしてみたいなと思います。

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