2012年12月17日

JTF翻訳祭2012に行ってきました!~井口耕二さん編~

記憶がはっきりしているうちに備忘録を残しておけばよかったのですが
色々重なってしまい、結局このタイミングになってしまいました。

(今回もまた、メモを取らずにお話を聞いていたので
お話された順番や内容の誤認等も生じる可能性があります。
どうかご指摘がありましたらコメント欄にお願いします。
また私の意見も混ぜ込んで書いておりますこともご了承ください。)


井口耕二さんについてはよくご存じの方がたくさんいらっしゃると思いますが、
公式プロフィールや講演告知はこちらです。


翻訳の原点とは何か。
本年度の翻訳祭のテーマをそのまま90分にまとめられたお話です。

井口さんも冒頭でお話されていましたが、
1つ前の関根マイクさんの講演と内容、目指す方向としてもとても近いものを感じました。
マイクさんを「やんちゃ」とすると、井口さんは「ジェントルマン」という感じでしょうか(笑)

さて本題です。

★翻訳の原点とは
当たり前ですが、翻訳者の原点は当然訳すところにある。
では品質とレート、どちらを優先するかという問題についてはどうか。
井口さんはこの問題について本人の考え方で決めればいい。
いずれにしても、クライアントが何を望んでいるのかを意識することが大事だとおしゃっていました。

この「クライアントの要求に合わせる」というのは、
単に品質とレートだけの問題だけでもなくて、
1つの文書を訳す時にも、
どういう目的の文書なのか、この訳を何に使いたいのか、といった
当たり前のことを押さえているか、押さえていないかでも
アウトプットが変わってきますよね。
そういった考え方の延長なんだろうなと思います。
親切な訳(商品)、相手の立場に配慮するといったことは
何も翻訳だけに限るものでもないと思います。

★翻訳者分布の今
6月に行われた翻訳フォーラムの大オフ会の講演でも言及されていましたが、
縦軸に価格、横軸に品質を取った場合の
翻訳者さんの分布図をご紹介くださいました。

分布はお尻の大きなひょうたん型になっていて、
ひょうたんのお尻側が「低価格、低品質」がどんときて、
そこからウエストがくびれて、
頭がぽこっとついているように「高価格、高品質」の集団がある。

みんな「高価格、高品質」の集団に入りたいと思ってる。
ではどうやってそれを実現させようかという話に移りました。

★レートの低い案件は手を抜いてもいい?コスト意識ってそういうこと?
実はこのスパイラルにはまってしまう翻訳者も多いそう。
レートが低いからといって手を抜いていては
いつまでも「低価格、低品質」のゾーンから脱出できない・・・

こういうのは「コスト意識」って言いませんよね?
後日(12/3)、井口氏はツイート上でも、
レートによって力加減を変えるべきではないとし、
「やるなら全力。全力でやりたいと思えない仕事なら断る」
と書かれていました。

★翻訳者の実力とは?
上のゾーンに行くには、翻訳の実力を上げる必要がもちろんあります。
この翻訳者の実力を以下のように説明されました。
 
6つの項目の総合力
外国語、日本語、専門知識、調査力、ツール、営業力

このうち、近年ではツールに注目が集まっていますね。
そのツールというのも、
用語統制、再利用、効率アップ?、分担、コストプラン、インターフェイス
に分けて説明がありました。

★業界の「品質」と「価格」のグラフ
前述の「価格と品質」の相関グラフをさらに引き寄せて考えてみると、
ある程度コンスタントに結果を出せるラインを中心に
上下2相に別れて分布している。

下層は烏合の衆状態で、
日々仕事に追われるけれどレートも低いようなイメージ

中央の層は、コンスタントな発注があるが、
たとえば和訳の場合、すごく日本語力が必要な案件の場合に依頼されることはない。

ここで文芸翻訳者の話になり、
文芸=日本語力と翻訳力が高く、
専門知識は弱くても、後行程がラク(直しが少ない)ため、
難しい和訳案件を、専門用語の修正等は後からやらなければならないとしても
文芸畑の方にお願いするクライアントの存在がある、とお話がありました。

やはり日本語力というか、きちっと意味が伝わる文章を書けることの重要性ですね。
専門知識は何度か案件を重ねればついてくるものですし・・・。


★どうやったら上層に行けるのか
やっぱり日々の努力しかない。
 
会場で「実力を上げたい人」と挙手させたとろ
さうがに100名ぐらい(翻訳者に絞ればたぶん全員)挙手があった。

次の質問。
「この中で外国語のブラッシュアップをしている人」
がくっと減って30名ぐらい?

さらに
「日本語のブラッシュアップは?」と聞かれると
本当に減ってしまった。

井口さんは、その様子に失望の様子を見せつつも、
しっかりと
「会場のほとんどの人はうまくなりたい、力を付けたいと思っている。
でも、その中で実際に行動できる人は本当に少ない。
行動できる人しか、高品質、高価格のゾーンには行けない」とおしゃっていました。

そして高品質、高価格のゾーンはすごく小さく見えるかもしれない、
ほんと数人なんじゃないかって思うかもしれないけれど
実際はきちんと市場はあるし、大きいところだと奮起を促してくださいました。

おそらく会場にいる全員が
高品質・高価格ゾーンの中核にいらっしゃる井口さんを知っているし、
目標としている方も多いと思います。
その中でこの具体的なエールはとても励みになるのではないでしょうか?

また挙手をさせるという行動を伴わせたことで、
より人の心に「行動しないとダメなんだ」ってことが染みこんだ気がします。


最後に
★レートの低い仕事を断る勇気
=仕事がない間に勉強したり、余暇を楽しんだりすればいい。
1年トータルでみれば売上げ上がることになるんじゃないの?
とおしゃってました。
 
別の記事かお話で伺ったことを書き添えておくと、
休みなく依頼がどんどんくるようになったら
レートを上げるために交渉をするか
トライアルを受けて、新レートで勝負するとき、だそうです。
次のステージにあがる一歩ということですね。

★講演全体の感想を少し。
井口さんのお話のされ方は非常に落ち着いてらっしゃって、
穏やかな語り口で適格な言葉を選び、発言されていました。
さらに、ご自身の経験、自信からくるお話は
とても説得力がありました。

そして問題意識を持っていない人には
曖昧に聞こえてしまうかもしれませんが、
話の結論を常に聴衆に考えさせるという点が
すばらしかったなと思います。

私のように頭の回転が遅い人には
「えっと、ということはだよ、要するにどういうことだ?」なんて咀嚼していると
次の話題に移ってしまったりするのですが(笑)

改めてお話を思い出して、書き出してみると、
来年はやること盛りだくさんだなって思いました。
そしてもっとトライアル受けないといけないな・・・。

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