2012年9月16日

奈良美智展「君や 僕に ちょっと似ている」

横浜美術館で開催中の奈良美智氏「君や 僕に ちょっと似ている」展を見てきました。
(~9/23まで)

出産やら子育てやらいろいろあって、
ゆっくり美術館に足を運ぶのは実は約10年ぶり。
あえてその10年を予習でうめることなく、
事前情報を一切入れずに素の自分で見たらどう感じるのか。
奈良美智氏とその作品と対峙してきました。

土曜日の夕方ということもあり、
ほどほどの混雑でしたが、女性(若い人~おばあちゃんまで)が多い印象でした。
みんな「かわいい~」を連呼して楽しそうに鑑賞。
ここまでおしゃべりが許容されている展覧会もあんまりないよな、って思ってしまうほど
にぎやかで暖かな雰囲気の会場でした。

★彫像
初の大型ブロンズ彫刻がある、ということで楽しみにしていました。
平面から立体になって、指で直接なでた跡の残る作品は、
やっぱり奈良色がしっかりついていて、重たいような、軽いような
つかみ所が難しい作品になっていました。

立体なので、自分で動いて色んな角度から作品を見られるわけですが、
どの角度からも平面の作品のワンカットのように見えてくるのが不思議。
自分の好きな奈良作品をオンデマンドで作れる!的なおもしろさがありました。

作品としてはルーシーがお気に入り。
この「ルーシー」という名前の別の作品も好きだった(と思う)ので、
好きなものはずっと変わらないのかなー。

★ペインティング/ドローイング
大型キャンバスの作品、段ボールや封筒に描かれたもの、紙に鉛筆のドローイングなど
多くの作品がありました。

奈良作品がどうしてこんなに人気があるのか。
かわいい、少女の表情がいい、見た目がキレイ・・・等
みんな同じような感想を言うけど、類似のタッチで描くなんちゃって奈良作家とは
明らかに違う何かがあると思うのです。

☆まず絵がうまい。
絵画作家なんだから当たり前じゃん、と思われるかもしれませんが、
画力がすごいと思います。
シンプルな線で描かれた絵。一見すると簡単なイラストみたいなので
誰でも描けそう・・・と思われるかもしれませんが、
段ボールにささっと描かれたように見えるイラストっぽい作品であっても、
どの線も迷いがなく、「ここにこういう線が必要」という強い意識で
描かれているのがわかります。
作品のタイプを問わず、
色、筆、線、素材、全てに絶対的な意思が働いているからこそ
奈良作品独特の世界が成立しているのではないでしょうか。

今回の展覧会で発表された大型のキャンパス作品は
特に色に存在感があらわれていたように思います。
平面だけど立体、室内だけど自然光のイメージが沸いてくるのはさすがです。
絵がうまいーとうなってしまいましたよ。

☆作品と作家、そして鑑賞者との関係性。
昔、誰だったかが良い作品の定義として
「作家と作品が鑑賞者と関係を構築できる」みたいなことを言っていたのですが、
今回の展示も作品を通じて作家とコミュニケーションを取っているような、
作品からストーリーがふつふつと生まれてくるような体験ができました。

作品を見て、少女の表情や全体の雰囲気を感じていると
作家のメッセージ?想い?みたいなものが伝わってきて、
「あー、このとき怒ってたのかなー」とか「哀しかったのかなー」なんて想像しちゃうんですが、
それがそのうち自分の中で
「きっとこのとき、彼女がこんなこと言ってしまったのが辛くて、こんな哀しい気持ちになちゃったんだな」って
勝手なストーリーを考えてしまったり、
中には「あー、この感じはあのときあそこでケンカした時の・・・」と自分の体験を思い出してしまう作品もありました。
なんかたとえが全部ネガティブですけど。。。

未読なため詳細紹介できませんが、 
評論家のどなたかが、奈良作品のキャプション(作品の中に描かれる文字)についてまとめられていましたが、
奈良作品の中でこのキャプションは作品を体験するのに大きな助けとなってるのではないかと思います。

鑑賞者(私たち)は、作家の感情、体験を作品を通して追体験するわけですが、
このキャプションを通して、よりリアルに、より個人的な体験に引き寄せて作品を鑑賞できるんじゃないかな。
奈良作品では、よい塩梅でうるさすぎず、作品の持つ物語を絶妙にサポートしていると思います。
その体験しやすさ、親しみやすさみたいな部分が、
普段はアートを見ない層にもファンが広がり、「かわいい~」と皆に言わしめているのではないかと。

作品サイズの大小はあれど、
全ての作品にメッセージを込め、物語を紡ぎ、形として整え、発表し続けるというのは
大変な作業なんだなーとしみじみ思いました。奈良氏のパワーに脱帽です。

★展覧会のタイトル、「君や 僕に ちょっと似ている」について
 こんなに長く書いていてちょっと恥ずかしくなってきていますが、
最後にタイトルについて。

実際に美術館に足を運ぶ前は、
作品に描かれているモノ(少女)が自分に似ているような感じがするのかな、と
思っていたのですが、 鑑賞後はちょっと違う感想を持ちました。

「ちょっと似ている」のは、作品を通じて語られる物語ではないかと。
作品を見て、作家からメッセージを受け取り、その結果生まれる物語は受け手(私たち)の
感性に任されているわけですが、
そこで感じることは結局「君や僕」で似通っているし、
「君や僕」が体験する、あるいはしてきた物語(実体験)にも似ているよね、
ってことなんじゃないかなーと思います。

 11年前の個展のタイトル「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」は、私たち 鑑賞者 を突き放すイメージだとすると、
今回のタイトルはぐっと引き寄せて温かく迎え入れてくれるようなイメージに変わりましたよね。
奈良氏の私たちに対する態度が変わってきたことが興味深いなと思いました。

この11年間、どんなことを考え、どんな作品を作り続け作ってきたのか。
今さらですが、少しおさらいしたい気持ちになりました。
そしてこれから先、どんな作品を作っていくのか。
これからの活躍もさらに注目です!

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